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64-1.遺構・遺物の編年には「悪魔の証明」が必要 [64.古墳の年代をエクセルで決める]

 『日本書紀』に書かれた時代は、神代が弥生時代、神武天皇から崇峻天皇までが古墳時代、推古天皇から持統天皇までが飛鳥時代と解釈している。考古学的にみると、古墳時代は前方後円墳が築造された時代と定義されており、古墳時代を解明しようとすると、前方後円墳の年代を知る必要がある。この前方後円墳の年代は遺構・遺物(古墳形態・埋葬施設・副葬品)の編年に照らし合わせて決められる。遺構・遺物の編年において、それぞれの要素が始めて登場する時期は、2~3個の同じ資料があればよく、比較的簡単に求められる。問題はその遺構・遺物が消滅する時期である。消滅する時期が明確な遺構・遺物がなければ、古墳の年代は決定できない。しかし「ある事実・現象が全くない」ということを証明することは、非常に困難で「悪魔の証明」と呼ばれている。遺構・遺物が消滅する時期を決めることは非常に困難であり、多くのデータから紐解くしか無いのである。

 

Z225.円筒埴輪・須恵器編年.png古墳の年代を決める遺構・遺物の編年は、円筒埴輪・須恵器の編年を基準にして作成されており、これらの編年無しでは、古墳の年代は決められないと言っても過言ではない。円筒埴輪・須恵器の編年が古墳の年代決定に重要な役割を果たしているのは、消滅する時期が明確にされているからと考える。ただ円筒埴輪・須恵器の編年は、相対年代(型式の順序)は確かであるが、絶対年代(西暦○○年)は不確かである。近年、古墳年代の決定に年輪年代測定法や炭素14年代測定法などの科学的手法が取り入れられ、絶対年代の精度が上がって来ている。Z225に私が作成した円筒埴輪と須惠器の編年表を示した。

 

私はこれまでに1932基の古墳(前方後円墳994基)のデータを集め、70種の遺構・遺物の編年と照らし合わせて、古墳の年代を決定してきた。しかし、その古墳のデータと古墳年代決定のプログラムをパソコンの故障により消失した。それらのデータとプログラムを再構築することを試み、143種の遺構・遺物の編年を行い、3294基の古墳データ(前方後円()墳1922基)を集め、古墳年代を決定した。

 

古墳研究者にとってのバイブルの本である近藤義郎編『前方後円墳集成』(1992年、山川出版社)には、全国5200余基の前方後円()墳が記載されている。私が集めた前方後円墳のデータは37%である。現在、世の中は「ビッグデータ」を処理して新たな知見を得る時代である。考古学においても16万基あると言われている古墳をデータベース化して、遺構・遺物の編年を行い、古墳年代を決定する時代がやって来ると考える。私がエクセルを駆使して行ったのは、その片鱗にすぎない。私は運転免許の更新に、認知症検査を受けなければならない年齢に達している。先日幸い合格したが、その先はそれほど長くない。古代史の解明に何かの約に立てばと、その手法を公開しようと思う。


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64-2. 遺構・遺物の編年をコード化 [64.古墳の年代をエクセルで決める]

古墳年代の決定に用いた143種の遺構・遺物の編年表(Z226)を巻末に示した。この編年表の年代は、3294基の古墳の年代を決める中で、幾度も修正を加えながら決定したものであり、「悪魔の証明」を乗り越えたものである。古墳の年代をエクセルで決定をするために、遺構・遺物の編年表をコード化している。興味のある方は、とりあえず私の手法で作成して、それを修正・追加・削除していただければよいと思う。ブログの表Z226を印刷しておくと作業がし易い。

 

はじめに、エクセルのSheet1[編年表]に、遺構・遺物の編年表(Z226)から、A列に「No」を、B列に「編年要素」、C列・D列に「年代」を1行から143行までインプットする。なお、「編年要素」で赤字は後で役に立つので赤色で記入すると良い。Sheet1のA列・B列の143行までをコピーして、Sheet2[編年コード作成]に、「形式を選択して貼り付ける」をクリックして「行列を入れ替えるテキスト」にマークを入れ貼り付ける。Sheet2の1行・2行を縦書きにするために、1行目を選定して右クリック、「セルの書式設定」の「配置」を選び、「方向」の「度」を「-90」にする。2行目は1行と同じで「方向」の「文字列」をクリックする。2行目の須恵器形式の英数字が書かれたセルは「方向」の「度」を「-90」にすると見やすい。

Z227.遺構遺物コード作成.png 

Sheet2[編年コード作成]のA列3行目に「=RIGHT(A1,1)」の命令を入れNo143(EM列)までコピーする。A列を選択して「挿入」をクリックし、A列3行に「西暦」を記入、A列4行に「240」を記入、5行に「=A3+10」の命令を記入し、コピーして「610」まで作成する。始めに143編年要素の「240」から「610」までの全てのセルを「0」にしておく。遺構・遺物の編年表(Z226)を見ながら、それぞれの「編年要素」について、その存在した年代に「1」を記入していく。その一部を表Z227に示した。

 

遺構・遺物の年代のインプットが終わると「編年コード」の製作に取り掛かる。まず、EO列(143:銅椀の次の列)の3行に「=CONCATENATE( 」の命令を書き、B列(1:前方後円墳)の3行を左クリックしてから「,」をインピット、次にC列(2:前方後方墳)3行を左クリックしてから「,」をインプット、この作業をEN列(143:銅椀)まで繰り返し、「=CONCATENATE(B3,C3,D3,・・・・・EL3,EM3,EN3)」の命令を作成する。これをEO列の41行(A列「610」まで)コピーすれば、143の文字列からなる編年コード表が出来る。この命令が間違っていないか、EO列3行のコードが「1234567890」のセットが14個あり、最後が「123」となっているかで確認する。Sheet2をコピーして「値」のみをshee3[編年コード]に貼り付け、A列(西暦)とEO列(編年コード)以外を削除し、1行目・2行目を削除すれば、遺構遺物編年コード表(Z228)が完成する。

Z226.遺構・遺物の編年表.png
Z228.遺構遺物編年コード表.png

 


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64-3.古墳の情報をウエブサイトから収集する [64.古墳の年代をエクセルで決める]

Z229.埴輪Ⅰ式検索.png古墳年代の決定は143種の遺構・遺物の有無を示す古墳コードと、143種の遺構・遺物の編年コードとを付き合せて行っている。ウエブサイトの「遺跡ウォーカー」には、約10万基の古墳の情報が収められており、目的の古墳名・遺構名・遺物名で古墳の情報を抽出することが出来る。古墳の年代を調べるためには、埴輪型式と須恵器形式のデータを全て収集することが必須である。例えば埴輪I式のデータは「遺跡ウォーカー」の「遺物概要」の欄に「埴輪I式」(「I」は文字のⅠでなく、半角の英文字Iアイ)を記入すると、Z229のように21件の古墳が抽出できる。この一覧から1件ずつ「詳細情報」をクリックすると、Z230に示されるような画面で情報が出てくる。

 


Z230.遺跡ウォーカー詳細情報.pngこの「詳細情報」をエクセルに取り込み、古墳コードを作成する。「詳細情報」の「古墳名」から「遺物概要」までをコピーして、「貼り付オプション」の「形式を選択して貼り付ける」をクリックして「テキスト」を選択して、Sheet4[古墳リスト作成]のA列1行に貼り付ける。そうすると1行のセルに「古墳名」が、2行のセルに「データ(ふりがな~遺物概要)」が貼り付けられるので、2行の「データ」セルを切り取り、B列1行に貼り付ければ、一つの古墳のデータが収集されたことになる。次の古墳の場合は、A列2行に貼り付け、3行の「データ」をB列2行に貼り付ける。この作業を繰り返し行い、埴輪I式のデータを取り込む。

 


古墳のデータが集まると、C列1行に「= SEARCH("所在地" ,B1,1)」、D列1行に「= SEARCH("緯度" ,B1,1)」、E列1行に「=MID(B1,C1+3,D1-C1-3)」を、F列1行に「=LEFT(E1,2)」の命令を入れ、C列1行からF列1行までをコピーして、最後の古墳まで貼り付ける。E列に所在地が、F列に都道府県名が表示される。A列~F列をコピーして、どこかの列に「値」のみコピーし、SEARCH命令の2列を削除すると、埴輪I式の「古墳名」「データ」「所在地」「都道府県名」のリストが作成できる。

 

Sheet5[古墳リスト]の先頭行に、A列「通しNo」、B列「編年要素」、C列「整理No」、D列「古墳名」、E列「データ」、F列「所在地」、G列「都道府県」、H列「古墳コード」を記入しておく。Sheet4[古墳リスト作成]の「古墳名」「データ」「所在地」のリストをコピーし、D列2行に貼り付け、A列~C列を記入し古墳リストを作成する。なお、Sheet4[古墳リスト作成]のA列・B列は消去して、次のデータ収集に使用し、Sheet5[古墳リスト]にデータを溜め込む。Z231に古墳リストの一例を示したが、「データ」のセルは短いが、このなかにデータ(ふりがな~遺物概要)の全てが入っている。この「データ」のセルから情報を引き出し、古墳の遺構・遺物の有無をコード化する。

Z231.古墳リスト.png

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64-4.古墳の遺構・遺物の有無をコード化 [64.古墳の年代をエクセルで決める]

古墳コードを作成する方法は、Sheet[編年コード作成]の先頭行から3行コピーして、Sheet6[古墳コード作成]に貼り付け、「前方後円墳」の列がI列になるよう、6列挿入する。I列の4行目に「=IF(IFERROR(SEARCH("",$E4,1),0)>0,1,0)」の命令を記入し、「前方後円墳」のI列から「銅椀」のEU列までコピーしておく。Z232に示すように、I列の3行目のセル「前方後円墳」をクリックして、ボードに表示される横文字の「前方後円墳」をドラッグしてコピーし、I列4行目の「=IF(IFERROR(SEARCH("",$E4,1),0)>0,1,0)」の命令「""」の中に貼り付ける。この作業をEU列の「銅椀」まで繰り返す。ただし、編年要素名に赤字があるときは、赤字はコピーしない。また、埴輪の型式は文字ではなく、半角の英大文字のI(アイ)V(ヴイ)を組み合わせた文字(I,II,III,IV,V)とする。

 

Z232.古墳コードの作成.png

また、余分なデータを拾い出さないように、L列「造出」の4行目は、
=IF(IFERROR(SEARCH("造出なし",$E4,1),0)>0,0,IF(IFERROR(SEARCH("造出",$E4,1),0)>0,1,0))」に、
BK列「鏡」の4行目は、
=IF(IFERROR(SEARCH("鏡板",$E4,1),0)>0,0,IF(IFERROR(SEARCH("鏡",$E4,1),0)>0,1,0))」に、
CW列「楕円形」の4行目は同じ命令で"楕円形埴輪"と"楕円形"に、ET列「子持」の4行目は"子持勾玉"と"子持"書き改める。最後に「コード」のEV列3行目の命令「=CONCATENATE(I3,J3,K3,・・・・・ES3,ET3,EU3)」を4行目にコピーしておく。

 

なお、三角縁神獣鏡の型式(A段階~D段階)と倭製三角物神獣鏡の型式(Ⅰ段階~V段階)は「遺跡ウォーカー」のデータには記載されていない。私は福永伸哉著『三角縁神獣鏡の研究』の最後にある「三角縁神獣鏡一覧」をもとに、Sheet6[古墳コード作成]のE列「データ」の最後に、型式の「A段階」~「Ⅴ段階」の文字を書き入れている。また、「遺跡ウォーカー」のデータには「初期横穴式石室」の表現はない。埴輪型式がⅡ式・Ⅲ式・Ⅳ式で横穴式石室の場合は、「初期横穴式石室」といえるので、それらについては「横穴式石室」のP列を強制的に「0」にして、「初期横穴式」のO列を「1」にする。

 

後はSheet5の古墳リストをA列~H列に見出しが3行目になるように貼り付け、4行目のI列からEV列をコピーして、古墳リストの最後の行まで貼り付けると、EV列に143桁の古墳コードが出来上がる。古墳コードを4行目以降終りまでコピーして、H列4行目に「値」のみを選択して貼り付ける。そして、Sheet6[古墳コード作成]のA列~H列をコピーしてSheet7[古墳コード一覧]に貼り付ける。I列を「0」で埋めておくと、古墳コードがはみ出さず見やすい。以上がウエブサイトの「遺跡ウォーカー」より古墳の情報を抽出し、古墳コードを作成する方法である。

 

古墳コードに誤った情報が入ると、古墳年代の確定が狂ってくる。例えば、古墳が築造された後に造られた石槨や石室(第2主体以降)の副葬品のデータも入っている。須恵器は横穴式石室の追葬、墳上祭祀、周濠・墳丘への混入などで、後世のものが遺物として多く出土している。また、須恵器の器種の「高杯・ハソウ・短頸壺・長頸壺」は土師器ものも抽出している。これらは、プログラムでは自動的に排除できない。年代決定を行った際、年代の決定に矛盾が生じる結果が出るので、その際「データ」の内容を読んで、Sheet6[古墳コード作成]で、該当の項目のセルの「1」を強制的に「0」に書き換えればよい。

 

「遺跡ウォーカー」以外の資料から古墳コードを作成する場合は、Sheet6[古墳コード作成]で、A列「通しNo」、B列「編年要素」、C列「整理No」、D列「古墳名」、F列「所在地」、G列「都道府県」、H列「古墳コード」を記入し、E列に「データ」として資料にある古墳の遺構・遺物のデータを記載すれば良い。その順序はランダムで良いが、その記載する遺構・遺物の名称には、編年コード表に記載した編年要素名(赤字を除く)が使われていなければならない。もちろん、“三角縁神獣鏡”のように、その編年要素名「三角縁」の前後に名称が付いていてもあっても構わない。円筒埴輪の型式は英文字半角の「I,II,III,IV,V」であることに注意が必要である。

 


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