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66-8.製錬滓・精錬滓・鍛錬滓の判定基準を発見 [66.弥生時代に製鉄はなされたか?]

鉄滓(スラグ)が、砂鉄や鉱石を製錬する工程で出来た製錬滓か、製錬で取り出された鉄塊を鉄の地金にする精錬鍛冶の工程で出来た精錬鍛冶滓か、それとも鉄の地金から利器・武器を作る鍛造鍛冶の工程で出来た鍛錬鍛冶滓か見分ける指標としては、鉄滓に含まれる鉄の成分%(T・Fe)が有効である。また、酸化チタン(Ti2)は炉壁の粘土や木炭の灰分に含まれてなく、原料に含まれていた酸化チタンの大部分が、鉄滓により排出されるため、鉄滓の分類の重要な指標の一つである。酸化チタンは砂鉄に多く含まれており、砂鉄を原料とした鉄滓の見分けには有効であるが、その含有量が少ない磁鉄鉱では、磁鉄鉱由来の製錬滓の酸化チタン量と、砂鉄由来の精錬滓・鍛錬滓の酸化チタン量が良く似た値となり、鉄滓の素性を明確に分類することが出来ていない。

 

Z275.TiO2とMnO.png酸化チタンと同じように、炉壁の粘土や木炭の灰分に含まれてなく、原料に含まれて、そして鉄滓として排出され地金に残らない成分に酸化マンガンがある。ただ、酸化マンガンの含有量は酸化チタンの含有量に比較して一桁少ない。そこで、酸化マンガンの含有量を10倍し、原料の砂鉄・磁鉄鉱と鉄塊に含まれる酸化チタン(Ti2)と酸化マンガン(MnOx10)の量を図Z275に示した。なお、図を見やすくするために値は平方根(SQRT)としている。図を見ると両者共2個の異常値を除くとほぼ等価であることが分かる。酸化マンガンは磁鉄鉱に多く含まれており、酸化チタンを補って、鉄滓の素性を明確に分類するための指標となり得ることが分かる。

 

前章で用いた鉄滓の分析データ、砂鉄系製錬滓と判定されたもの162件、鉱石系製錬滓が58件、精錬鍛冶滓42件、鍛錬鍛冶滓93件について、横軸を鉄の成分%(T・Fe)とし、縦軸を(Ti2/5+MnO/0.)の平方根(以後「TiMn指数」と呼ぶ)とした。図Z276 にその結果を示す。製錬滓は直線y=0.04X-0.8(以後「製錬/鍛冶直線」と呼ぶ)の上の領域にあり、鍛冶滓は直線の下の領域にある。鍛冶滓の領域で、横線y=0.7(以後「精錬/鍛錬直線」と呼ぶ)の上の領域が精錬鍛冶滓、下の領域が鍛錬鍛冶滓である。大澤氏・天辰氏の判定とは製錬滓で93%と合致し、精錬鍛冶滓は72%、鍛錬鍛冶滓は85%が合致している(0.1以内の差は無視)。両氏の判定と合致しなかった41点について、私の判定をもとに両氏の判定基準にプロットした。図Z277で右下の精錬鍛冶滓2点を除いて、私の判定に矛盾が無いことを示している。私の判定基準は、鉄滓の素性を明確に分類することが出来ると確信する。

Z276.鉄滓の素性判定.pngZ277.判定基準の検証.png

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