69-3.AIによる坏身の型式判定 [69.須恵器の型式をAIで判定する]
坏身の型式別形態変化を前節では、“立上り/器高”だけと捉えたが、一つの型式の形態のバラツキは大きく、また前後の型式の形態と重なっており、“立上り/器高”のガウス曲線一つでは、須恵器の型式を判定することが出来ないと考えた。そこで、杯身の図面(Z365)から“器高/外径(CH/OD)”、“立上り/器高(KH/CH)”、“立上り/外径(KH/OD)”、“立上り角度(Angle”)のデータを導きだし、4つのガウス曲線(Z366)を用いて、杯身の型式を判定が出来るようにした。全ての要素を○/○と比で表したのは、縮尺の無い図面や、正面から撮った写真からでも、データが採取できるからである。
近つ博物館の『年代のものさし 陶邑の須恵器』の裏表紙には、Z367のように坏身形態の変遷が描かれている。高台付の坏身の登場は飛鳥時代になってからであり、古墳時代の坏身は5C・6C・7C三つの形態のみである。裏表紙の図面から4要素の値を求め、ガウス曲線に当てはめZ368に、型式の適合を星取表(Z369)にまとめ型式を判定した。星取表から、5世紀のものはⅠ-2(TK216)に、6世紀のものはⅡ-1(MT15)あるいはⅡ-2(TK10)に、7世紀のものはⅡ-6(TK217古)に比定することが出来た。
『年代のものさし』の裏表紙にある坏身図面と、中村氏の『和泉陶邑窯出土須恵器の型式編年』にある型式別の図面とを照らし合わせると、Ⅰ-2型式はTK395号窯、Ⅱ-1型式はTG38号窯、Ⅱ-2型式はTG44号窯、Ⅱ-6型式はTG206号窯の坏身の形態がほぼ同じであった。両者の図面を、外径を合わせて重ね合わせると、Z370のようにピッタリ一致している。これらは、AIが導き出したガウス曲線による坏身の型式判定が、有効であることを物語っている。