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26A-6.珠江中流域の野生イネは雑草イネ [26A.イネ栽培の起源地は何処か]

陳文華氏の「漢代における長江流域の水稲栽培と農具の完成」を読むと、「中国の歴代の古稲サンプルを概観して、進化の度合いからみるならば。早期の稲殻の粒形はわりと小さく、後世に至るにしたがい粒形が大きくなり、漢代にはすでに現在の品種とほぼ変わりないほどになっていた」とある。粒形に関わる遺伝子は野生に近い早期の栽培イネの遺伝子型から、現在の栽培イネの遺伝子型になるまでに約5千年の年月か掛かっている。栽培化の遺伝子型はイネの起源より後に、数千年前後の年月を掛けて徐々に増え、現在の栽培イネが持つ遺伝子型に固定されたと考える。 

栽培化遺伝子に焦点を合わせて遺伝距離を出した場合、野生イネと栽培イネの遺伝距離が短いということは、野生イネが栽培イネと同じ栽培化遺伝型を多く持っているということになる。もし、栽培化の遺伝子が一挙に増えるのではなく、数千年の年月をかけて徐々にふえるのであれば、野生イネと栽培イネの遺伝距離が非常に小さいということは、その野生イネは、何千年の長い稲作の歴史の中で、栽培イネと交雑を起こし汚染(遺伝子流動)されている可能性が高いという見方も出来る。
 

「野生イネと栽培イネの遺伝距離が一番小さい場所が起源地」ということが成り立つのは、野生イネの集団に栽培イネからの遺伝子流動が一切なかった、あるいは有ったものは淘汰されたという場合に限り成り立つと思う。これまで述べてきたように、珠江中流域の野生イネは漢代の水際で行う「火耕水耨」の稲作により、栽培イネの花粉からの遺伝子流動を受けていたと思われる。中国の珠江中流域の野生イネの場合、遺伝距離が栽培イネに最も近いからと言って、珠江中流域がイネ栽培化の起源であると言えないと思う。
 

近年、中国東北部・朝鮮半島・日本の直播をする水田稲作で、雑草イネ(Weed rice)がはびこり、米の品質を下げることが問題になってきている。この雑草イネは野生イネに栽培イネの花粉が他家受粉して出来たハイブリッド種で、遺伝的には遺伝子流動(Gene flow)が起こったと言われる。このハイブリット種は、野生イネが生息しない温帯地方では雑草イネとされるが、野生イネが生息する亜熱帯・熱帯地方では雑草イネか野生イネかの判別は付き難いそうだ。
 

図109雑草イネ起源.jpg図109は佐藤洋一郎氏の「Origin and evolution of wild, weedy, and cultivated rice」にある、野生イネ・雑草イネ・栽培イネの関係図である。栽培イネのジャポニカ・インディカから野生イネ・ルフィポゴンに遺伝子流動が起こり、雑草イネが誕生する様子を表わしている。中国の珠江中流域に生息する野生イネGD-GX1は、2000年前に野生イネと栽培イネから出来た雑草イネであったのではないかと思える。

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