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26A-3.珠江中流域の野生イネの疑問 [26A.イネ栽培の起源地は何処か]

Nature』に掲載されたHuangKurata氏の論文には、付録の図表を含めて野生イネの情報は、採取地の緯度と経度のみである。中国の野生イネに対してもっと情報はないかと探していると、2008年10月に米国遺伝協会刊行B101野生イネ分布.jpgの『Heredity』に発表された「Genetic structure of Oryza rufipogon Griff. in China」(Wang,Zhang,at al)の論文を
見つけた。この論文では中国の889の野生イネを対象として、その遺伝子構造を調べ、7つの地理的集団に分けている。図101にそれらを示す。黄色がGD-X1で広西・広東に分布、赤がGX2で広西に分布、ピンクがHNで海南に分布、緑がFJで福建に分布、オレンジがJX-HuNで江西・湖南に分布、青がHuN2で湖南に分布、黒がYNで雲南に分布している。 

表102は、これら7つに分けられた野生イネの集団と、ジャポニカ・インディカとの遺伝子距離を示している。この表から見ると広東省・広西省に分布するGD-GX1が最も栽培イネに近い。HuangKurata氏の論文で栽培イネに最も近かった広西・広東の野生イネはGD-GX1のことであった。GD-GX1につい表102遺伝距離.jpgては、採取された郡別に遺伝距離が算出され系統樹が作られている。この系統樹を分化の過程が分かる一般的な系統樹に書き直したのが図103である。系統樹を4等分し、それを地図上にプロットした(図104)。第一が赤、第二が青、第三が緑、第四が黄色である。
 

図103GD-GX1系統樹.jpg
図104GD-GX1分布.jpg










図104の大きな黒丸は、HuangKurata氏の論文で、ジャポニカ栽培の起源地とされた広西省の珠江中流域である。系統樹と照らし合わせると、広西の珠江中流域に出現した赤GD-GX1が、分化するに従いその外側に向かって青へと拡散し、その後珠江の河口域にある支流の上流域の緑に広がり、最終的には珠江の河口デルタ地帯の黄色に定着している。拡散の情況は河下から河上へと拡散しており、Wang,Zhang氏の論文にある、水系統が関わる拡散とは思えない。花粉による拡散にしては距離が離れており、人為的な拡散のような感じがする。
 

私の疑問は、Wang,Zhang氏の論文のGD-GX1の系統樹で、最も分化が早いとされる珠江中流の赤GD-GX1が、HuangKurata氏の論文では、遺伝距離から見て最も栽培イネに近く、イネの栽培化の起源の野生イネと見られているという問題だ。珠江中流の赤GD-GX1が分化して、広東デルタ地帯の黄色のGD-GX1が生れたならば、広東デルタ地帯の野生イネが、栽培イネに最も近い関係にあってもよさそうに思えるのだが、事実はその逆であり、矛盾を含んでいるように思える。
 
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