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26A-2.イネの起源地は遺伝距離で分かる [26A.イネ栽培の起源地は何処か]

国立遺伝学研究所の倉田のり氏は、ライフサイエンス新着論文レビューに「イネの栽培化の起源がゲノムの全域における変異比較解析により判明した」と、『Nature』に掲載された「A map of rice genome variation reveals the origin of cultivated rice 」(Huang,Kurata,at al)の解説を記載している。解説においては、野生イネのルフィポゴンについて「O.rufipogon の遺伝的な集団構造の解析を行った。系統樹解析と主成分分析により、O.rufipogonは3つのサブグープOr-IOr-IIOr-III に分類された。・・・中国南方から採取した系統の多くはOr-IIIグループに属していた」とある。そして、栽培イネのジャポニカはルフィポゴンのOr-IIIグループ(多年性)を起源とし、インディカはルフィポゴンのOr-Iグループ(一年性)に起源をもつとしている。これらの結論は、アプローチの仕方は異なるが、既に発表されているジャポニカ・インディカの起源についての論文とほぼ同じである。

 論文は「人為的な選抜による爪痕は遺伝子変異の減少と栽培化遺伝子における遺伝子頻度のかたよりとして表われる」として、55座の栽培化遺伝子を同定し、この栽培化遺伝子に焦点をあて、栽培化に関わりがあった野生イネを探している。これらを分かり易く具体的に例えれば、現在栽培しているイネの穂に実った種子(米粒)は、脱穀するまで落ちることはないが、野生イネは穂に種子を実られてもすぐに落ち(脱粒)てしまい、収穫出来る米粒は僅かである。稲作の栽培化の過程のなかで、人々はより脱粒しない品種を選択して来た。遺伝的に言えば、sh4という遺伝子に欠損が現れると脱粒が起こり難くなるそうだ。逆言えば、野生イネの集団同士を比較したとき、sh4遺伝子に欠損が多い集団が、イネの栽培化に関わりのあった野生イネであると言える。このような栽培化に関わる遺伝子のタイプをたくさん持っている野生イネが、栽培イネの起源に関係しているという考えだ。

この論文が注目を集めたのは、「イネの栽培化は中国の珠江中流域が起源であることを、ゲノム解析で解明した」と言いきったところにある。解説では「中国南方に由来するOr-IIIのサブグレードは、O.rufipogon(野生稲)のなかでもOryza sativa(栽培イネ)にもっとも近い関係にあった。・・・この55座に関して野生イネ系統を採取地別に分類したうえで、Oryza sativaとの遺伝距離を算出した結果、栽培化は中国広西地区の珠江中流域においてはじめられたことがあきらかになった」と述べている。栽培イネと同じタイプの遺伝子を持っている割合(遺伝子頻度)が高い野生イネは、栽培イネと遺伝距離が最も小さく、栽培イネの起源種であるとのことである。
 B98アジア遺伝距離.jpgB99中国遺伝距離.jpg






B100ルフィポゴン分布.jpg図98に示したアジアの国別の野生イネと栽培化イネの遺伝距離を見ると、中国の野生イネが際立って小さく、栽培イネに近いことが分かる。図99に示した中国内での省別の野生イネと栽培化イネの遺伝距離では、広西省・広東省が小さいことが分かる。図100は中国における野生稲ルフィポゴンの分布図である。プロットの色合いが濃いほど遺伝距離が小さく、栽培イネに遺伝的に近い。図では見えにくいが、大きな黒丸で囲っている広西省の珠江(Pearl River)中流域のプロットの色が一番濃くなっていることが分かる。ここがイネの栽培化の起源地である。


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