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29-9.人工顔料の漢青を分散した青い管玉 [29.ガラスを透して古代を見る]

2001年5月18日奈良文化財研究所は、京都府峰山町の赤坂今井墳丘墓から出土した頭飾りのガラス製管玉に、古代中国の青色顔料「漢青」(ハンブルー)の結晶が混在していたことが分かったと発表している。管玉に混在している漢青の成分はケイ酸銅バリウム(BaCuSi4O10 )で、結晶粒子は50~100ミクロン(1000ミクロンが1ミリ)の大きさだそうだ。ガラス製品に青色顔料の漢青を混和し、ガラスを青色に着色していることを見つけたのは世界で初めてだそうだ。この漢青を分散した管玉は、赤坂今井墳丘墓の他にも、岡山県津山市の有本遺跡と鳥取県湯梨浜町の宮内第1墓から見つかっている。 

エジプトには紀元前3000年ころに開発された「エジプトブルー」と呼ばれる人工顔料がある。この化学組成はケイ酸銅カルシウム
CaCuSi4O10)で漢青(ハンブルー)と極めて類似している。このことより、人工顔料やファイアンス、ガラスの製造技術がエジプトから中国に伝わって、鉛バリウムガラスが誕生したとの意見がある。 
G63漢青粉末.jpg
スイスのチュリヒ大学のBerke氏は、2006年10月に、この問題に関する論文を発表し、中国のハンブルーは中国独自で開発されたものであると結論付けている。そして、孔雀石・石英と毒重石の粉末を混合し、900度に加熱すれば、炭酸ガスと水が抜けだし、ハンブルーが出来る事を示した化学式を提示している。孔雀石は古代の銅の鉱石で、紀元前1300年の中国の殷墟遺跡からも出土している。
   
Cu2(CO3)(OH)2+8SiO2+2BaCO3     →   2BaCuSi4O10+3CO2+H2O
       孔雀石    石英  毒重石  900   ハンブルー   炭酸ガス 
                                                                       G64孔雀石.jpgG65石英砂.jpgG65毒重石.jpg                 








2007年1月、アメリカのスタンフォード大学のLiu氏、Mehta氏等は、中国のハンブルーは中国独自で開発されたものであると、Berke氏と同じ結論を導き、そして、道教の道士が人工の翡翠として、屈折率の高い鉛バリウムガラスを生み出した。この鉛バリウムガラスの製造技術の中からハンブルーが生れたとしている。
 

私は「27-14.鉛バリウムガラスの通説を斬る」で、「中国の鉛バリウムガラスは、その原料となる鉛鉱石にバリウムが混じっていたために出来た」という通説に対して、「ガラスの屈折率を高めるために、毒重石(
BaCO3)を用いた」と結論付けた。毒重石を原料としている漢青(ハンブルー)の存在が、その考えの正しいことを証明してくれた。
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