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23-2.イネの起源は熱帯ジャポニカ [23.稲の起源はスンダランド]

2002年12月に小泉総理は世界に向けて、「イネのゲノム(すべてのDNA)の解読が終了した」と宣言した。解読が終了したということは、DNAに書きこまれている記号(塩基配列)を全て読んだということで、その塩基配列がどんな働きをしているのか、全て解ったということではない。いま世界の多くの学者が、イネのDNAのどの部分の遺伝子の塩基配列が、何の働きをしているのか、研究の鎬(しのぎ)を削っている。 

イネのDNA研究の先頭を走っているのが、農業生物資源研究所(NIAS)である。そのNIASが2008年7月、コメの大きさを決める遺伝子(
qSW5)を発見したと発表した。それまでに見つけていたイネの脱粒性(穂からの籾のこぼれ易さ)の遺伝子(qSH1)と、炊いたコメのもちもち感を決める遺伝子(Waxy)と合わせて、三つの遺伝子の変化について、アジア15ヶ国のイネ、インディカ31種、ジャポニカ111種のDNA分析を行っている。 

その結果、インディカでは、
qSW5qSH1WaxyのDNAの変化はほとんど見られなかったが、ジャポニカでは、色々の変化のパターンが見られ、インディカとジャポニカは、別々の過程で栽培化が進んでおり、二つの起源地は別々であると結論付けている。 また、比較した3つの遺伝子の全てが、野生に近い優性遺伝子(コメの幅が細い、脱粒し易い、ねばねばが少ない)を持つイネが、東南アジア、特にインドネシアやフィリピンの熱帯ジャポニカに見られることを発見している。そして、ジャポニカの起源がインドネシアやフィリピンにあるとしている。 

B42 NAIS1.jpgイネ栽培化の鍵である脱粒を抑制するタイプの遺伝子が中国と日本でしか見られず、東南アジアでは見つからなかったことから、次の結論を得ている。
1)現在東南アジアで陸稲として栽培されている熱帯
  ジャポニカが
ジャポニカの起源に近い。
2)熱帯ジャポニカが中国に伝わって長江流域で水田
  化され、
温帯ジャポニカが生れた。
3)温帯ジャポニカが更に日本に伝わった。

イネの起源地が中国でなく東南アジアの島々であったというのも衝撃的だが、熱帯ジャポニカから温帯ジャポニカが生れたというのも、熱帯ジャポニカの起源が明確でなかったから衝撃的な話だ。これら「遺伝子の変化から見たイネの栽培化」を図B42に、「3つの栽培化遺伝子の変化と分布」を図B43に示す(NIASのプレスリリース・論文(改変)より)。なお、栽培化遺伝子の変化は、qSW5 Wx qSH1qsw5 Wx qSH1qSW5 wx qSH1qsw5 Wx qsh1qsw5 wx qSH1qsw5 wx  qsh1の6種である。
B43 NAIS2分布.jpg


 


 


 



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