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67-3.箸墓の年代を基準に編年表を作成 [67.古墳時代は前方後円墳の時代]

古墳時代最初の大型古墳である箸墓古墳の築造年代は、2009年に国立民俗歴史博物館が箸墓古墳周辺から出土した土器に附着した炭化物を炭素14年代測定し、240年から260年であると確定した。また、『書紀』は崇神10年に箸墓を造ったと記している。『書紀』の編年を900年短縮した「縮900年表」によれば、崇神10年は260年にあたる。古墳時代最後の大型古墳である見瀬丸山古墳は、571年に崩御された欽明天皇の陵墓と考える。見瀬丸山古墳の築造年代は、石室内より出土したTK43型式(550〜579年)より570年に比定する。箸墓古墳の年代を260年、見瀬丸山古墳の年代を570年として、これら二つを原点に古墳年代を決めれば、考古学と歴史学が一致してくると考える。

 

箸墓古墳は陵墓参考地として宮内庁の管轄下にあり、考古学的な調査はできないが、宮内庁書陵部が収集した埴輪は都月型特殊器台形埴輪、宮山型特珠器台、特殊壺形埴輪、壺形埴輪であると報告されている。私の遺構・遺物の編年表から箸墓古墳の年代を決めると、年代の決め手は都月型埴輪(260〜289年)となり、箸墓古墳の築造年代は275年±15年となる。箸墓古墳の年代を260年とすると、編年表の年代の代表値は15年も異なってくる。そこで、箸墓古墳の年代を260年するべく、都月型埴輪の年代を250年〜269年とし、それに合わせて前期に関わる遺構・遺物の一部の編年を見直し、より精度を上げるため編年項目も増加した。

 

Z247.前方後円墳の形態1.png考古学者の方は、古墳の年代を決めるに当たっては、古墳の遺構・遺物はもちろんのこと、古墳のプロポーションを参考にしていることが多い。出現期の前方後円墳は前方が撥(ばち)形に開いており、箸墓古墳のプロポーションがまさにこれに当たる。図Z247、前方後円墳のくびれ幅と前方幅の関係を示したグラフである。直線Bはバチ形というタイプで、前方幅がくびれ幅の2倍であることを示している。次に登場する古墳は直線Aの柄鏡形というタイプで、くびれ幅と前方幅が同じである。桜井茶臼山古墳・メスリ山古墳などがこれである。
の出現期古墳は直線Aと直線Bの間に点在してあり、また直線A・直線Bの近くに中期や後期の古墳があり、バチ形・柄鏡形だけで、出現期の古墳だと断定できない。


Z246 前方後円墳の形態2.png図Z246は墳丘長と後方幅の関係を示したものである。出現期の前方後円墳
は㊥の枠内だけで、㊧や㊤の部分には存在しないので、編年の指標に使用できると考えた。㊧の部分は前方部が短い前方後円墳で帆立貝形という名称で呼ばれており、編年表にも載せていた。しかし、墳長に対する前方部の割合を調べてみると、45%でも帆立貝形と称しているのがあるかと思えば、15%でも帆立貝形との名称が付いていないものがあり、古墳の詳細情報にある帆立貝形の呼称の信頼性がないことが分かった。そこで前方長が後円径の半分(墳長/後円径<1.5)以下のものを帆立貝形と定義し、年代を300〜599年として使用することとした。この値は帆立貝形前方後円墳の研究者の考えと一致している。前方幅が後円径より広い㊤の部分は墳形の名称をテルテル坊主形として編年表に加え、前方幅/後円径>1.1の場合に年代を370〜579年として適用することにした。

 

Z250.後前高差.png出現期の前方後円墳は後前高差が大(後円部が高く前方部が低い)と言われている。図Z250は図Z247の㊥の枠で囲まれた古墳の後前高差を調べたものである。墳丘が50m(目盛3.9)以上において、後前高差が-2m以下に前期の古墳が集中していることは確かだが、中期・後期の古墳があり、前期の古墳だと断定出来ないことが分かる。そこで図Z246の◎のピンクの枠内の範囲(2.0≧墳長/後円径≧1.5、1.0>後方幅/後円径)で、墳長が75m以上、後前高差が-2.5mより大きな差(-.5≧後前高差)がある場合、墳形名称を後前高差形として、年代を250〜399年として適用することにした。

 

埴輪は盗掘にあう事がないため破片等の依存率は高い。また、墳丘の発掘調査が出来ない天皇陵からも収集されることがある。そこで、靫(ゆぎ)形埴輪(330〜569年)・草摺(くさずり)形埴輪(300〜459年)・翳(さしば)形埴輪(370〜519年)と孔のある壺形埴輪・二重口縁などを底部穿孔(300〜359年)として追加した。鏡・剣()・勾玉がセットで出土した場合は三種の神器(270〜549年)の項目も指標に繰り入れた。古墳年代を確定する遺構・遺物は表298に示すように148項目になった。なお編年表には参考として、土師器の型式別の年代、布留0式(240〜269年)、布留1式(270〜319年)、布留2式(320〜359年)、布留3式(360〜399)を示している。この編年表をもとに、全国6305基の古墳年代を決めたが、矛盾を起し年代が決められなかったのは前章で記した29基より、5基増えただけであった。また、年代幅30年以内である古墳は54基増えて438基となった。それらを表299に示している。 0-


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Z298.148遺構・遺物編年.png

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Z299-1.年代幅30年古墳.png

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Z299-2.年代幅30年古墳.png

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Z299-3.年代幅30年古墳.png
Z299-4.年代幅30年古墳.png

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