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66-7.鉄滓の成分は製鉄の道しるべ [66.弥生時代に製鉄はなされたか?]

古代の製鉄遺構は、製鉄炉本体が残存していたことは殆どなく、土坑・焼土・羽口・鉄滓などで、その存在を確認している。もし弥生時代に製鉄がなされていたとしても、製鉄炉が繰り返し使用されたものでなければ、土坑・焼土が遺構として残存することもなく、また羽口が粘土で作られておれば、粘土で作られた製鉄炉本体が残存していないのと同じように、羽口は残存していないであろう。これらを考えると、弥生時代に製鉄が行われた証拠は、鉄滓に求めるしかないと言っても過言ではない。しかし、鉄滓が出るのは製錬の工程ばかりでなく、製錬で取り出された鉄塊を鉄の地金にする精錬鍛冶の工程でも、鉄の地金から利器・武器を作る鍛錬鍛冶の工程でも、鍛冶炉の中に鉄滓が出来る。出土した鉄滓が製錬滓か、精錬鍛冶滓か、鍛錬鍛冶滓かの見分けが科学的になされる必要がある。

 

Z272.Slog鉄量とTiO2.png鉄滓の分析の分野では第一人者であられる大澤正巳氏は、鉄滓が製錬滓・精錬鍛冶滓・鍛錬鍛冶滓の判定において,図Z272を基準にしておられる。この図は、2005年に「出土鉄滓の化学成分評価による製鉄工程の分類」で天辰正義氏が提示した図に準じている。図をみると、重なった部分が多く、鉄滓を明確に見分けることが難しいのではないかと思えた。そこで両氏が鉄滓の判定に関わった分析データを集め、その判定と、図Z272の判定基準との関係を調べた。砂鉄系製錬滓と判定されたもの162点、鉱石系製錬滓が58点、精錬鍛冶滓42点、鍛錬鍛冶滓93点である。

 

Z273.判定基準外.png砂鉄系製錬滓・鉱石系製錬滓・精錬鍛冶滓・鍛錬鍛冶滓の判定基準の範囲外であっても、比定されていた比率を表Z273に示した。表の黄色の部分は、判定基準の範囲を広げなければ、データの信頼性が95%(2シグマ)を下回ってしまう項目で、図Z274の点線がその広げた範囲である。これをみれば重なった範囲が大きくなり、鉄滓が製錬滓か、精錬鍛冶滓か、鍛錬鍛冶滓か、鉄滓の素性を明確に見分けることが出来ないということが分かる。専門の方々は、鉄滓のガラス質成分比率や組織観察でその曖昧さを克服しているようである。しかし、鉄滓の判定の信頼性は高くなく、製錬滓の判定でもって我国の製鉄(製錬)開始年代を比定するまでには至ってないようである。

Z274.鉄滓判定基準と分布.png

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