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64-8.円筒埴輪Ⅲ式は前期に属している [64.古墳の年代をエクセルで決める]

古墳の年代決定のプログラムにより、3294基の古墳の年代を決定したが、その年代幅が前期・中期・後期の3期に明確に区分できた前方後円()墳は1512基で、前期(260~400年)462基、中期(400~470年)165基、後期(470~600年)885期であった。前期と後期は年代幅が大きいので、前期は前期前葉(260~320年)38基と前期後葉(360~400年)103基、後期は後期前葉(470~520年)107基と後期後葉(550~600年)45基の古墳を抽出した。各期の終りと次の期の始まりの年代が重なっているのは、±10年の重なりがあるためである。また、前期と中期にまたがる395~405年の年代と判定された古墳には円筒埴輪Ⅲ式が多いため前期に、また中期と後期にまたがる465~475年と判定された古墳には円筒埴輪Ⅳ式が多いため中期に編入している。巻末のZ243には、年代幅が30年以内であった385基の前方後円()墳の一覧を示した。

 

Z244.巨大古墳.png全国の古墳で墳長が200mを越える巨大古墳は、白石太一郎編
『古代を考える 古墳』には35基が掲載されており、その内訳は
前期11基、中期21基、後期3基である。年代が明確に区分され
た1512基の中で、巨大古墳はZ244に示すように29基、
その内訳は前期21基、中期7基、後期1基である。これらの巨大古墳は、『古代を考える 古墳』に記載された数よりも6基少ないにも関わらず、前期では10基も多い結果となっている。その原因は、
円筒埴輪のⅢ式の時代を、私は前期に編入しているが、白石氏(現在の考古学では)は中期に編入しているからである。

 

古墳を研究する者のバイブルである『前方後円墳集成』では、全国的規模での前方後円墳の横並びの関係をつかむために、広瀬和雄氏が作成した「畿内における前方後円墳の編年基準」を共通の編年基準として、古墳時代を10期に区分することを採用している。この編年基準では、川西宏幸氏の円筒埴輪編年と田辺昭三氏の須恵器編年を基本として、その他の要素を加えて編年基準が作成されている。この編年基準は「集成編年」として、研究者の間でもっぱら用いられている。

編年基準の5期の定義は、「円筒埴輪のⅢ式、同種多量の滑石製農工具が顕著となる。鉄鏃は4期出現の型式が、また短甲は三角板革綴・長方板革綴型式がそれぞれ主体を占める。銅鏃・筒形銅器・巴形銅器・石製腕飾類などは4期で消滅し、この時期には続かない。」とある。これに従えば、「石製腕飾(石釧・鍬形石・車輪石)・筒形銅器・巴形銅器・銅鏃」は、円筒埴輪のⅢ式と共伴しないことになる。

私が調査した古墳では、これら4種の副葬品は円筒埴輪Ⅲ式と共伴している。石製腕飾では島の山古墳(奈良)で石釧・鍬形石・車輪石が、遊塚古墳(岐阜)で車輪石が出土し、巴形銅器は鳥居前古墳(京都)、行者塚古墳(兵庫)、千足古墳(岡山)、白鳥古墳(山口)で出土し、銅鏃は久津川車塚古墳(京都)、乙女山古墳(奈良)、千足古墳(岡山)、愛宕山古墳(徳島)で出土している。また、前期古墳の象徴とされる三角縁神獣鏡が室宮山古墳(奈良)、久津川車塚古墳(京都)から出土している。

これらからして、円筒埴輪のⅢ式の時代は前期に編入するのが相応しいと考える。なお、古墳時代中期の代表的副葬品は、須恵器・馬具・鋲留短甲であるが、須恵器は後世のものが混入する可能性が高いので除くと、円筒埴輪のⅢ式から出土した馬具は新沢274号墳(奈良)と溝口の塚古墳(長野)の2基のみで、鋲留短甲は皆無である。新沢274号墳・溝口の塚古墳は前期と中期の接点の古墳で、年代は395~405年と考えれば、何も矛盾は起こらない。円筒埴輪のⅢ式の時代は、前期後葉(360~400年)の時代であるといえる。

古墳には盗掘されているものが多く、また天皇陵のように発掘調査されていないものも多い。そのような古墳で、築造年代を前期・中期・後期の3期に別けようとするとき、埴輪の型式は有効な指標となる。しかし、埴輪が出土している古墳でも、その型式が判定されている古墳は17%程度で意外と少ない。埴輪の型式判定の因子の一つ「黒班」は、最も容易に見つけることが出来る。円筒埴輪のⅢ式の時代を前期にいれると、「埴輪に黒班が有れば前期」という単純明快な指標が出来る。「遺跡ウォーカー」の検索で、「埴輪」は5574件がヒットするが、「黒班」でヒットしたのはたったの8件で、「黒班」が資料として重要視されていないのは残念である。

Z243-1.古墳前期前葉.png

Z243-2.古墳前期中葉.png












































Z243-3.古墳前期後葉.png


















































Z243-4.古墳中期.png





























































Z243-5.古墳後期前葉.png





























































Z243-6.古墳後期中葉.png





Z243-7.古墳後期後葉.png








































































































































































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