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41-2.円筒埴輪の編年 [41.古墳時代の3期区分を考える]

近藤義郎編『前方後円墳集成』(1992年、山川出版社)という本がある。全6巻に全国5200余基の前方後円()墳の調査資料を集大成してあり、古墳研究者にとってはバイブルの本である。この本では全国的規模での前方後円墳の横並びの関係をつかむために、広瀬和雄氏が作成した「畿内における前方後円墳の編年基準」を共通の編年基準として、古墳時代を10期に区分することを採用している。この編年基準では、川西宏幸氏の円筒埴輪編年と田辺昭三氏の須恵器編年を基本として、その他の要素を加えて編年基準が作成されている。この編年基準は「集成編年」として、研究者の間でもっぱら用いられている。

円筒埴輪の編年を確立した川西宏幸氏は、1978年に「円筒埴輪総論」を『考古学雑誌』に発表し、その10年後に加筆修正して著書『古墳時代政治史序説』にその論文を掲載している。その中で川西氏K13円筒埴輪の編年.jpgは、「円筒埴輪は、形が単純であるうえに、古墳に伴う遺物の中では時間や空間を越えてかなり普遍的に存在する。しかも、副葬品と違って墳丘に樹立されているから、大がかりな発掘調査を経なくても資料が得られる。・・・円筒埴輪の編年がもし可能ならば、考古学上の時間や空間をはかる物差しのひとつに加えうるはずである。」と述べ、焼成・器面の調整(ハケ)・底部調整・タガ(突起)・スカシ孔の変化からⅠ式からⅤ式までの5段階に分類している。

図K-13は、近つ飛鳥博物館の『考古学からみた日本の古代国家と古代文化』(2013年)に掲載された「円筒埴輪の編年」である。川西氏の編年を分かり易く表わしている。ただ表にある「年代」は、川西氏の論文にある「年代」とは異なっており、その違いを下記に記した。近つ飛鳥の円筒編年は、箸墓の築造年代と須恵器の生産開始年代の遡上により約30年、円筒埴輪開始年代は約50年、川西宏幸編年より古い実年代を示している。

          Ⅰ式   Ⅱ式   Ⅲ式   Ⅳ式   Ⅴ式

  川西宏幸編年  4C中葉 4C後葉 5C前葉  5C中葉  6C
                         5C後葉

  近つ飛鳥編年  3C後半    4C中葉 4C後葉 5C前葉  5C後葉 
           4C前葉                                        5C中葉  6C


Ⅰ式・Ⅱ式・Ⅲ式 とⅣ式・Ⅴ式の判別は、埴輪に「黒斑」があるかどうかの単純なことだ。前者は野焼きで焼成するため「黒斑」が生じ、後者は窖窯
(あながま)で焼成するため「黒斑」が生じないということである。窖窯は初期の須恵器の焼成にも使用されており、Ⅳ式・Ⅴ式の埴輪は須恵器と共伴することも納得がいく。円筒埴輪の型式の基準が分かり易いこと、破片でも判定出来ることもあり、当初懐疑的な人もおられたようだが、古墳の築造年代の判定に有効に活用されている。


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