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30-4. 古墳時代のソーダ系ガラス [30.ガラス素材は弥生時代から造っていた]

弥生時代に全盛をきわめたカリガラスは、古墳時代に入っても流通を続け、6世紀終わり頃には途絶えるようになる。一方、弥生時代の終わり頃、ソーダ系のガラスが現れ、古墳時代に全盛を極める。ソーダ系ガラスにはAl2O3が少なくCaOが多いソーダ石灰ガラスと、Al2O3が多くCaOが少ないアルミナソーダガラスがある。一般的には、アルミナソーダ石灰ガラスと表記するが、私はあえて「石灰」の言葉は使用していない。 

ソーダ石灰ガラスは古代オリエント(メソポタミヤ・エジプト)やローマに出土するガラスであり「西方のガラス」と言われ、アルミナソーダガラスはインド・東南アジアで製作されたガラスであり「アジアのガラス」と言われている。しかし、日本においては一つの古墳からソーダ石灰ガラスと高アルミナソーダガラスが一緒に出土することが多々あり、それぞれ別の所から素材を手に入れたとは考え憎い。古墳時代のソーダ石灰ガラスとアルミナソーダガラスの成分を下記に示す。
                  SiO2   Al2O3    Na2O   K2O    CaO   MgO    
  ソーダ石灰ガラス 
65%    3.3%  18%    2.6%   6.4%   2.6% 
  アルミナソーダG   61%    9.8%   18%    2.5%   3.4%   0.9%   

ソーダ系ガラスの出所を探すためには、まずソーダ成分が植物灰か鉱物のナトロンかを見極める必要がある。植物灰とナトロンの違いは、
Na2Oに対する(MgOK2O)の比率で見分けることが出来る。『ガラスの文明史』黒川高明によると、植物灰を使用した古代エジプト・メソポタミア(n=89)では、(MgOK2O)/Na2Oの値は0.30であり、ナトロンを使用したローマ・地中海沿岸(n=318)では0.08である。(n)は試料数を示す。古墳時代のソーダ系ガラスの(MgOK2O)/Na2Oの値は、ソーダ石灰ガラス(n=145)が0.29、アルミナソーダガラス(n=252)は0.19と、両者とも植物灰を使用したガラスと考えられる。 

ソーダ系ガラスの植物灰はどのような植物から採取されたのであろうか。一般的な植物、木や草の灰は
Na2OよりK2Oが多い。海藻でさえNa2OよりK2Oの方が多い。K2O よりNa2Oが多い植物は非常に少なく、砂漠に生える灌木とか、海岸に生える塩生植物のみである。塩生植物にはSalsora(オカヒジキ)系のものと、Salicornia(サンゴ草)系、Saueda(ヒチメンソウ)があることが研究論文に載っている。 
G75オカヒジキ.jpgG76サンゴ草.jpgG77シチメンソウ.jpg


                             ソーダ成分が何の植物灰から抽出したものであるかを知るためには、
K2O/ Na2OMgO/CaOの値を調べれば良い。K2O Na2Oは精製されても分離出来ないし、MgOCaOは精製で両方とも除去される。同じ成分が他から加わらないかぎり、植物灰そのものとガラスの値は一致するはずである。日本のソーダ系ガラスの値は下記の通りであるが、これらの値から古墳時代のソーダ石灰ガラスとアルミナソーダガラスは、同じ植物灰から作られたと考えられる。                                                      K2O/ Na2O MgO/CaO 
       
ソーダ石灰ガラス   0.15   0.39    
       
アルミナソーダG   0.15    0.26  
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