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30-3.コバルトブルー着色の検証 [30.ガラス素材は弥生時代から造っていた]

弥生後期に出土したカリガラス小玉の総数は48,000個、その半分がCoOを含有していると仮定すると、コバルトブルーのビーズは24,000個である。ビーズの大きさを直径0.5㎝x長さ0.4㎝の円柱と仮定すると、ビーズの体積は0.0785㎝3となる。 カリガラスの比重を2.5とすると、ビーズ1個の重さは約0.2g。ビーズ24,000個で4.8㎏となる。
酸化コバルト(
CoO)の含有量は0.05%だとすると2.4gとなる。日本全土から出土した弥生時代後期のコバルトブルービーズ24,000個を、着色するのに必要な酸化コバルト(CoO)の量は、たったの2.4グラムでしかない。「大山鳴動鼠一匹」、コバルト鉱山の存在を云々する話ではない。 

コバルトの鉱石は輝コバルト鉱で銀白色の鉱石である。何の変哲もないただの石ころを、古代人がガラスを青く着色しようと使ったとは思えない。陶磁器でコバルトブルーを発色させるために使うのが「呉須」という土である。主成分は酸化コバルで、鉄・マンガンの酸化物が不純物として入っている。コバルトブルーのガラス成分には
Fe2O3 MnOが多く、呉須が原料かと思える。しかし、呉須が磁器の顔料として使われるようになったのは、14世紀の中国・元の時代のことだ。呉須は黒色の土状で「呉須土」として産出する。何の変哲もないただの土を、古代人がガラスを青く着色しようと使ったとは思えない。 

古代人が天然の玉石や貴石のような色をガラスに着色しようとした時、何を考えるであろうか。「ガラスを緑色に着色しようと思い、緑色の孔雀石を砕いてガラスと一緒に溶かしたら、ガラスが青色に着色した。」、こんなことではないだろうか。これを科学的にいうと、「孔雀石が分解して酸化銅(
CuO)となってガラスに融け込み、銅イオン(Cu2+)の作用で青色に着色した。」ということになる。「28-9.ハンブルーを含有した青い管玉」で述べた漢青は、「青色のガラス管玉を作ろうと、青い顔料の漢青をガラス原料に混ぜたら、青い半透明のガラスが出来た」であろう。化学的には「青い顔料の漢青はガラスには固溶せず、細かな粒子として分散し、ガラスは青く見えた。コロイド着色の一種である」となる。 

コバルト華という紫赤色をした美しい鉱物が、輝コバルト鉱の表面を薄くおおっている場合がある。成分は
Co3As2O88H2Oで、加熱すれば容易いに酸化コバルト(CoO)が出来る。輝コバルト鉱(CoAsS)より有用だが、なにしろ量が少ないために鉱石とはなっていない。下記がコバルト華の分解だが、300度以上で容易に起こる。   
      
Co3As2O88H2O CoO + As2O3 + O2 + 8H2O 
G74コバルト華.jpg
古代人は、「ガラスを赤色に着色しようと、紫赤色のコバルト華を粉末に砕き、他の原料と混ぜてガラスを作ったら、コバルトブルーのガラスが出来た」というのではないだろうか。日本でもコバルト華は、奈良の大仏の銅を採掘したことで有名な、山口県の長登鉱山の付近で採れる。長登鉱山の付近には戦時中にコバルト鉱を採掘した金ヶ峠鉱山がある。
 

鉱石愛好家のブログを見ていると、いまでも長登鉱山の付近で採集出来るそうで「ある場所の表面が、ピンク色一色に染まり、あまりに簡単に採集できるので拍子抜けした」と書いてある。なお、長登鉱山では輝コバルト・コバルト華と一緒にバビントン石がある、この石には鉄とマンガンが含まれており、まさに「呉須」とおなじである。長登鉱山のコバルト華を使うと、微量の酸化コバルトとその30倍の鉄・マンガンの酸化物を含んだガラス組成が出来ると考える。日本でもコバルトブルーのカリガラスは作れたと推察する。

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履歴書の志望理由

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 履歴書の志望理由 (2013-06-11 14:23) 

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