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28-4.前漢の鉛バリウムガラスを解く [28.中国・韓国の古代ガラス]

G35 鉛バリウムガラス.jpg前漢時代の鉛バリウムガラスのように、大きな容器や装飾品を製作するためには、ガラスはビーズの製作の時より、より低温で融けなければならない。そのために、アルミナ(Al2O3)成分を減ずるための技術の飛躍がなされたのであろう。戦国時代の湖南省長沙の璧の成分が、前漢時代の容器や装飾品の成分の値に近いことからすると、技術の飛躍は長沙でなされたのかもしれない。 

G36 江蘇省ガラス杯.jpg表35の成分表で、
Al2O3SiO2の比率を見ると、戦国時代の鉛バリウムガラスでは0.15であり、黒曜石の0.17に近い。しかし、前漢時代の鉛バリウムガラスでは0.02であり、黒曜石は使われていないことが分かる。前漢時代になって、大型のガラスが製作されるようになると、黒曜石が使われなくなったと考えられる。しかし、表35で見られるように、Na2Oが使用されている。このNa2Oは何を原料として入れられたのであろうか。 

古代オリエントでガラスの起源となるソーダ石灰ガラスが始めて作られた時、ソーダ成分は砂漠地帯の植物灰からであった。そして、その後エジプト産出の天然ソーダ・ナトロンが使用されるようになった。植物灰とナトロンの違いは、
Na2Oに対する(MgOK2O)の比率で見分けることが出来る。植物灰を使用したガラスでは、(MgOK2O)/Na2Oの値は0.31で、ナトロンを使用したガラスでは0.075である。 

前漢時代の鉛バリウムガラスに含まれる、
Na2Oに対する(MgOK2O)の比率を見ると、0.082であり、ナトロンが使用されていたことが分かる。ナトロンとは天然の炭酸ナトリウム(ソーダ:Na2CO3)のことで、中国でも青海・新疆・チベット・内蒙古などの塩湖のある乾燥地帯で産出する。 

前漢時代の鉛バリウムガラスの組成は下記の通りである。
                                           SiOAl2O3    CaO     MgO    K2O   Na2O   PbO   BaO
     前漢鉛バリウムG   37%  0.85%  0.48%  0.09% 0.17% 3.17%  40%  16%
前漢時代の鉛バリウムガラスは、石英とナトロン、そして白鉛鉱・毒重石で製作されたと考える。石英(SiO2には砂が使用され、石英砂には2%程度の長石(Al2O3)が混じっていたのであろう。古代オリエントのナトロンを使用したソーダ石灰ガラスには、ガラスの品質を向上させるためにCaOが添加され、Na2Oに対するCaOの比率、CaO/Na2Oの値は0.43である。前漢時代の鉛バリウムガラスの値は0.15と低い。CaOMgOK2Oと同様ナトロンに混じっていたものであろう。 

G16に見られるように、前漢時代の中国にはソーダ石灰ガラスの分布が見られない。しかしながら、前漢時代の中国の鉛バリウムガラスには、ソーダ石灰ガラスの原料となるナトロンが使用されていた。このことは、日本の古代ガラスの解明に、重要な意味を持つと考えられる。

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