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27-7.中国のカリガラスの謎を解く [27.古代ガラスの源流を探る]

中世のヨーロッパのガラスは、ローマガラスの影響を受け、エジプトで産出されるナトロンを使用した、ソーダ石灰ガラスが作られていた。8世紀の終わりになると、エジプトのナトロンが枯渇して来たこと、ヴァイキングの活動により交易ル-トの破壊がなされたこと、これらが合わさって、ヨーロッパではナトロンを使用したソーダ石灰ガラスが作れなくなった。 

そこで、カリウム成分を多く含む植物(カシ・ブナ・シダ)の灰を使用した、カリ石灰ガラスが製作されるようになった。これがヴァルトガラスである。一方、中世ヨーロッパでは無色・透明なガラス、クリスタルガラスが求められるようになり、不純物を除去するために植物灰の精製が行われた。下記にヴァルトガラスの組成を示す。(「ガラスの文明史」
p308、黒川高明、春風社) 
                                                 SiO2  Na2O   K2O  CaO  MgO  Al2O3 
      ヴァルトガラス (WG)   53%   0.7%   13%  19%   3.8%   2.3%
      (植物灰:ブナ)        6%   1.9%    28%  38%   11%
      植物灰精製WG      74%   0.3%   20%  2.8%  0.2%   2.0%
      中国カリガラス             76%   0.4%   14%  1.8%  0.6%   3.6% 

ヴァルトガラスはシリカと植物灰が1対1の割合で製作されていることがわかる。また、植物灰の精製は、灰を水と混合し煮沸してアルカリ成分を水に溶かせ、その上澄み液を取って、アルカリ成分の結晶が出来るまで蒸発乾燥して作ることで、岩塩から塩を作るのと似ている。
SiO2MgOは全く水に溶けず、CaOは若干融け、Na2OK2Oは良く溶ける。植物灰を精製したヴァルトガラスを見ると、それが現れている。 

G26アジアガラス.jpgこれらの値を見ると、中国のカリガラスは、植物灰を精製したヴァルトガラスに似ており、カリウム成分の多い植物灰を精製して作られていると考えられる。図G26はガラス研究の第一人者であられる、アメリカの
H.Brill氏が「Scientific Research in Early Asian Glass」に掲載したものである。中国の戦国・前漢・後漢時代の遺跡から出土するカリガラスは、古代オリエントでは製作されなかったガラス組成であるが、このカリガラスは中国のみならず、同時代のインドやタイ・ベトナムで出土しており、中国生まれのガラスとは言い切れない。カリガラス
は何処で生れたのであろうか。

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