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26-6.スヴァンナブーミは苗族の国 [26.インディカ、5千年の旅]

2005年に開港されたタイの国際空港は、タイ国王よりスワンナプームと命名された。スワンナプームとは、紀元前3世紀頃にインドで成立した、釈迦の前世についての物語集「ジャータカ」に出て来る、海の彼方の「黄金の土地、金地国」を意味するスヴァンナブーミが、タイ語で訛ったものである。タイではスパンブリー県の「黄金のゆりかご」の名前を持つウートーン市が、スヴァンナブーミであると考えられている。 

五世紀初めに出来たスリランカの仏教史書「ディーパヴァンサ」には、インドのアショーカ王(紀元前268~232年)がスヴァンナブーミに二人の僧を派遣されて仏教を伝えたとある。
15世紀のビルマのバゴー朝のダンマゼーディー王が建てた碑文には、「釈迦入滅後236年を経て、2人の僧がスヴァンナブーミ国に来訪され、仏教が確立した。」と刻まれてある。19世紀にまとめられたビルマの仏教史書「サーサナヴァンサ」には、スヴァンナブーミはビルマ南部の港町、タトンにあったモン人の王国のことであるとしている。 

スヴァンナブーミの事は伝説と考えられているが、私は史実が含まれていると考える。紀元前にビルマ(ミャンマー)のタトンに苗族(モン族)の王国が存在し、海上沿岸航海を通じてインドとの交易があったと考える。こう考えると、紀元前128年に前漢の武帝に進言した張騫の、「大夏に居た時、蜀の布と邛の竹杖を見た。何処で手に入れたかと聞くと、大夏の東南数千里にある身毒国(インド)の市場で蜀の商人から手に入れたと。」という話が繋がってくる。後漢書によれば、97年と120年に、徼外夷の撣国王雍由が朝貢している。特に120年の朝貢には、口から火を吹く幻人(マジシャン)を連れてきており、幻人は自ら海西の大秦(ローマ)の人であると名乗っている。そして、撣国の西南は大秦に通じているとしている。徼外夷とは中国領域以外の国であり、撣国はビルマのタトン王国と考えられている。
 

苗族と同系統の言語を話す民族は、中国の国内だけでなく、タイ・ミャンマー・ラオス・ベトナムの山岳地帯に少数民族として住んでおり、モン族と呼ばれている。タトンにあったモン人の王国は、4000年前頃、長江中流域にいた苗族が、ビルマ(ミャンマー)のタトンに移り住んだと考える。そうして、3500年前の三星堆遺跡より出土した子安貝は、彼らが関わりを持ったのであろう。舟の漕行に長けた苗族は、子安貝を求めてアンダマン海、ジャワ海へと漕ぎだしていたに違いない。そのうち沿岸伝いにインドへも行ったのであろう。2500年から2000年前、戦国~後漢時代の雲南の昆明国・滇国の貯貝器に入れられた子安貝も、ビルマのタトンに住む苗族(モン族)が関わっていたと考える。
 

B91 子安貝の道.jpg図91に成都からタトンへの道を示す。成都から金沙江を遡り雲南の大理へ、哀牢山の西麓の景東を通り、普洱を経て西双版納(シーサンパンナ)タイ族自治州の景洪へ、メコン川を下りコラート台地のチエンカーンから陸路を南にノンノクタ遺跡へ、ノンノクタ遺跡から西にメーソットを経てミャンマーのタトンへの道である。なお、地図で見ると大理からタトンまでは、タンルイン川(怒江)を下った方が容易く見えるが、タンルイン川は急流で舟での漕行は困難である。タトンからは船で沿岸伝いにバングラデッシュを通りインドへと、また、マラッカ海峡を経てジャワ海へ漕行した。タトンが海上交通の重要な位置にあることが分かる。
 

チエンカーンは南下してきたメコン川がコラート台地にぶつかり、東に向きを変える所にある。チエンカーン近くのプープラパート歴史公園には、5000年前に砂岩に描かれた牛や人の絵がある、この地も早くから人が住んでいたところだ。ノンノクタ遺跡の位置は、チエンカーンへは真北に、ミャンマーのタトンへは真西という交通の要所にあたる。ノンノクタ遺跡はBC3000~2500からAD200年までの遺跡とされており、三星堆遺跡より出土した子安貝の時代、雲南の昆明国・滇国の貯貝器に入れられた子安貝の時代にも存在していた。
 

ノンノクタ遺跡と近くのバンチェン遺跡の人骨の歯を調べた札幌医科大学の松村博文氏によると、これらの人骨は、シノドント(北方系モンゴロイド)とスンダドント(スンダランド人)の中間型を示しているとしている。
熱帯ジャポニカのウルチ米を携えてメコン川を遡上したスンダランド人と、子安貝を求めてメコン川を下って来た北方系モンゴロイドの苗族は、ノンノクタ遺跡で出会ったのだ。
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