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20-2.同位体比分布図に直線が現れる [20.青銅器の鉛同位体比の秘密]

青銅器の鉛同位体比分布図の朝鮮系遺物ライン、ラインDが示す産地推定について熱い議論がある。馬淵久夫氏はラインDの産地を韓国東部の慶尚北道の鉱山(第一・第二蓮花鉱山)で観測されている、直線上に長く分布する特徴を持つミシシッピ・ブァレー型の鉱床としている。ただ、その鉱山は特定されていない。 
                             (図をクリックすると大きくなります)
B9朝鮮系遺物.jpg「理系の視点からみた考古学の論争点」の著者である新井宏氏は、「朝鮮半島の南部に、ラインDに載る鉛鉱石があるという予測は、いまだ検証されていない」と反論し、ラインDに載る原料としては、現在のところ雲南省にしか該当するものがないと、その一例として長江上流の会沢鉱山を挙げている。そして、ラインDは雲南省の鉛と新規原料の稀釈の中で産まれたとしている。これに対して馬淵氏は、「鉛同位体比が近いからと言って歴史学・考古学上なんらの根拠もない遠距離地同士を結び付けるべきでないと反論している。図B9にそれらを示す。図の中にある三星堆遺物とは四川省の成都郊外の遺跡の遺物である。
 


B10魏・呉紀年鏡.jpg銅器の鉛同位体比を分布図にプロットしていると、同種・同形の場合、その測定値は小さな領域に存在するのでなく、プロットが直線あるいは直線帯を示すことが多い。図B10に、魏と呉の紀年鏡で示す。年代の違う紀年鏡がみごとに直線に載っている。
 これら直線が現れる原因は、二つの異なった鉱山の鉛を使用し、その混合比率が異なるからだとしている。この考えは、前記論争をしている馬淵氏も新井氏も同じである。 

これらの直線は、
同じ鋳型を使った同笵のものにも現れる。同笵ということは、同じ場所で、鋳込んだ時期もほぼ同じと思われる。まして、青銅に占める鉛成分は多くても15%位までであり、二つの鉱山の鉛を常に使う必然性は全くない。直線の出現が二つの異なった鉱山の鉛を使用したとは、私には思えない。図B10で示す魏の鏡の内、青龍3年の方格規矩鏡2面、景初4年の斜縁盤龍鏡2面、正始元年の三角縁神獣鏡3面は、それぞれ同笵鏡である。 
B12荒神谷.jpg
出雲の荒神谷遺跡出土の358本の剣の中から、
同笵の剣を選び、その鉛同位対分布図を図B11に示した。同笵の剣は吉田広氏「弥生時代の武器形青銅器」を、鉛同位体は馬淵久夫・平尾良光等の「島根県荒神谷遺跡出土銅剣・銅鐸・銅矛の科学的調査」を参照した。同笵剣A(A4,C19,
C22,C69,C112
)で同笵剣B(B67,C32,C36,C40,C106)で
ある。同笵
であつても、プロットは同じところに集まる
のではなく、直線を作るのである。

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