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13-3.畿内説にとっての伊都国 [13.邪馬台国畿内説を斬る]

邪馬台国畿内説にとって、卑弥呼を共立した倭国は、銅鐸文化圏にあったと考えざるを得ない。卑弥呼が銅鐸を割り、銅鐸による祭祀を否定し、鬼道による新しい宗教を提唱したとしても、銅矛による祭祀を行う国々が、おいそれと卑弥呼と同盟を結び、一つの連合体を作ったとは思えない。 

邪馬台国畿内説の人も、九州説の人も、いや邪馬台国は何処にあったかを唱える人の全ては、私以外、伊都国は糸島平野、奴国は福岡市・春日丘陵としている。特に伊都国については、魏志倭人伝は次のように述べている。「王、使いを遣わして、京都、帯方郡、諸韓国に詣ること、及び郡の倭国に使いするには、皆津に臨みて捜露し、伝送の文書、賜遣の物は、女王に詣らしめ、差錯することを得ざらしむ」。伊都国は邪馬台国が洛陽・帯方郡との交流を持つ要の地で、文章や貢物・賜物の管理をまかされている。
 

邪馬台国にとって、伊都国は最も信頼のおける国である。魏志倭人伝には伊都国について「世々王ありて 皆女王国に統属す。郡使の常に駐する所なり」とある。このような国の関係は、完全な属国か、姻戚関係があるか、特別な恩義があるか、そして故地であるしかない。卑弥呼が共立された190年以降から、魏に朝貢の使いを出した239年の50年間の間に、畿内にある邪馬台国が伊都国を支配したのだろうか。倭国大乱があって、それに辟易した国々が、卑弥呼を共立したのであるから、卑弥呼の務めは平和を保つことであり、戦争を始める事ではない。宗教の違う地域に戦争を仕掛けたとは思えない。それだと、同一の宗教の国々がまとまり、大戦争に発展してしまう。
 

遠く離れ宗教も違う国と国が、姻戚関係があったり、特別な恩義があったりするとも考えにくい話である。唯一考えられるのは、卑弥呼以前の邪馬台国が、例えば饒速日命のように、北部九州から畿内に来た勢力と、畿内の土着の勢力とが結び付き出来た場合である。これだと邪馬台国の祭祀は、郷に入れば郷に従いで、銅鐸を祀ることになる。また、中国に朝貢しようとしたとき、故地の伊都国に頼み、郡使を常に留め、邪馬台国と洛陽や帯方郡と交流を持つ要の地として、文書や貢物・賜物の管理を任せと考えられる。しかし、魏志倭人伝は「女王国以北は、特に一大率を置きて、諸国を検察せしむ。諸国之を畏憚す。常に伊都国に治す」とあり、邪馬台国が銅矛を祭器とする国々を支配し、伊都国がそれを検察している。これは邪馬台国が銅矛を祭器とする国を戦争により支配しなければ出来ないことだ。
 

図32 高地性集落.jpg弥生の高地性集落は戦いの防御のために作られたと考えられているが、弥生後期の高地性集落は、12章5節(12-5)の図32で示したように、近畿とその周辺、瀬戸内沿岸には存在するが、北部九州には存在していない。まるで、攻める近畿に守りの高地性集落があり、攻められる北部九州に高地性集落がない、話はまるで逆である。どう考えても、畿内の邪馬台国が伊都国と結びつくことが考えられず、邪馬台国畿内説は成立し得ないと思える。それは卑弥呼が銅鐸を割って、新しい宗教で臨んでも同じである。邪馬台国畿内説にとって伊都国の問題は致命的な欠陥だと考える。
 

邪馬台国畿内説を唱える人は、北部九州から大和・河内の庄内式土器が出土することを論拠としている。庄内式土器を代表する庄内甕で見れば、伊都国があったとされる糸島平野では、明確に近畿系庄内甕と認められるのは三雲サキゾノ遺跡から出土した庄内式大和甕の1点のみである。これでは、邪馬台国が畿内にあり、伊都国は糸島平野とは言えないであろう。
 
図36弥生鏡.jpg
邪馬台国北部九州説にとって、伊都国については全く問題がない。しかし、もっと大きな欠陥を持っている。図36に弥生遺跡より出土した鏡の分布、図37に古墳より出土した三角縁神獣鏡の分布を示す。弥生時代の鏡はその中心が北部九州にあり古墳時代の三角縁神獣鏡はその中心が畿内にある。三角縁神獣鏡を卑弥呼が貰った鏡とした場合、邪馬台国北部九州説は成り立たない。だから、邪馬台国北部九州説の人には、三角縁神獣鏡は国内で製作されたと考える人が多い。
 


図37三角縁神獣鏡分布.jpg唯一成り立つとすれば、卑弥呼あるいは壱与の時代に、西から東に、邪馬台国が遷都したことである。これならば、邪馬台国が大和にあっても、伊都国とは魏志倭人伝の記載の通りの関係を結ぶことが出来る。三角縁神獣鏡が大和から地方に拡がったことも理解出来る。しかし、邪馬台国畿内説を唱える人は、大
和の土器が北部九州に来ているが、北部九州の土器が大和に来
ていないと、邪馬台国の東遷を認めていない。邪馬台国畿内説
と邪馬台国北部九州説では、いつまで経っても邪馬台国問題は
解決しないのである。


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