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5-4.邪馬台は国のまほろば [5.伊都国の謎を解く]

春三月、景行天皇は子湯県におでかけになり、丹裳小野に遊ばれた。このとき東方を望まれて、お側のものに、「この国は真直に日の出る方に向いているなあ」と仰せられた。それでその国を名づけて日向という。この日、野中の大石に登られて、京都を憶い歌を詠まれた。 

「愛しきよし 我家の方ゆ 雲居立ち来も 倭は 国のまほろば 畳づく青垣 山籠れる 倭し麗し 命の 全けむ人は 畳薦 平群の山の 白橿の枝を髻華に挿せ この子」 

景行天皇が憶われた「京都」は、大和の纒向を指し、歌の中に出てくる「平群」は、奈良盆地西部の竜田川の川沿いにある平群、現在の三郷町・平群町を指していると考えられている。これらより、この歌は大和をなつかしむ歌、「国思歌(くにしのびのうた)」と解釈されている。古事記においては、この「国思歌」が日本武尊の辞世の歌になっている。古事記のなかで熊曾征伐、出雲討伐、東国平定をなしとげた日本武尊は、東国平定の帰路の途中、三重の能煩野で亡くなり、白鳥となって大和に帰っている。 この悲劇の英雄の辞世の歌とするならば、遠くの国を思いなつかしむ歌、「国偲(くにしのびうた)」とするのが似合っている。しかし、この歌は古事記に書かれた日本武尊の辞世の歌としては、暗さがなく明るいのである。日本書紀に書かれたように、野中の大石に登られて、我が家の方を眺めて詠んだ歌とする方が似合っている。 

日向は奈良時代、臼杵・児湯・那珂・宮崎・諸県の五郡に分かれていた。各郡はいくつかの郷に分けられ、児湯郡には八郷がおかれていた。西都原周辺には、三納・穂北・三宅・覩唹・平群の五郷があった。邪馬台国があったとした西都市付近に「平群」が存在していたのである。西都原古墳群の北側には穂北があり、南側には三宅がある。この三宅には日向の国府跡があり、景行天皇と御刀媛の息子、豊国別皇子の子が日向国造として居住していたとされる。この三宅より百塚原という丘陵を一つ越えた所に平郡という地名がある。 

この平郡は平安時代には「平群」であった。平郡の北五キロメートルには三納があり、南五キロメートルに都於郡がある。都於郡が覩唹(とお)である。都於郡は海抜百メートルの広大な台地にあり、水が豊富で水田もあり、平地と見間違える程である。この台地の西端には高さ百メートルの小山があり、そこには都於郡城跡がある。都於郡城は南北朝時代、1337年に伊東氏により城が築かれたが、この城は七つの入り口を有し八千人の城兵を持つ、大規模なものであった。この城からの眺めは良く、「春は花、秋は紅葉に帆をあげて、霧や霞の浮舟の城」と、読まれている。城の西方の三財川へは急崖が連なり、眼下に広大な平郡の平地が見渡せる。 

都於郡城跡の南二キロメートルの所に黒貫寺があり、その広大な境内には景行天皇の高屋宮跡と言い伝えられている旧跡もある。黒貫寺の所在地は古くは児湯郡高屋村であり、近くには高屋神社もある。高屋という地名は、都於郡城跡のある小山の近くに現在でも残っている。神武東征を成し遂げた磐余彦尊の祖父であり、邪馬台国の女王卑弥呼の義父とした彦火火出見尊は、日向の高屋山上陵に葬られている。この高屋山上陵こそ、都於郡城跡のある小山にあったのではないかと思われる。 

話は変わるが、私は20数年前の3月頃に初めて西都市を訪れた時、貴重な経験をした。前日に宮崎市に宿泊し、朝一番のバスで西都市に向かった時のことだ。天気は良く晴れていたのに、バスが西都市に入る頃、バスの進行方向の左の山の方から急に雲海のような霧が流れてきて、バスの前方が見えなくなるくらいになった。後で地図を見ると、左の山の方に景行天皇の高屋宮跡のあるという黒貫寺があり、その向こうに都於郡城跡のある小山があった。「我が家の方ゆ 雲居立ち来も」、景行天皇がこの歌を詠まれたのは史実であったと確信している。 

景行天皇が遊ばれた丹裳小野こそ、西都原古墳群一帯であり、平群が平郡で、野中の大石こそ都於郡城跡のある小山である。邪馬台国は都於郡城跡から眺められる所に存在していたと空想出来る。さて舞台はそろった。登場人物は景行天皇と妻の御刀媛、そして子供達である。もう一度、「国思歌」を味わっていただきたい。

「ああ、すばらしい眺めだ、わが家の方から、雲がわいて流れてくることよ。わが先祖の故郷、邪馬台国は最もすぐれ国だなあ。青々とした山が重なり、垣のように包んでいる。邪馬台はすばらしく美しい。生命力の溢れた子供達よ、この平群の山の白橿の枝を、髪飾りとして髪に挿せ。わが子よ。」 

景行天皇が野中の大石に登られ、「国のまほろば」と褒め讃えたのは、磐余彦尊の故郷、邪馬台国の都であった。邪馬台国は日向に存在した。そして、卑弥呼の息子、磐余彦尊は東征した。
                       (神武東征については後で記載する)                                    
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